「自己破産」とは?|4つのデメリットとメリットをわかりやすく解説
不動産投資の失敗談のなかで、よく聞く言葉が「自己破産」です。
「自己破産の危険性が……」「自己破産には陥らないよう……」などと度々言われるので、“自己破産=投資失敗の最悪なパターン”とイメージしてしまうものの、「そもそも自己破産とは何なのか?」ということについては、意外と知らない人が少なくないようです。
そこで今回は、不動産投資・資産運用を考えている人がいまさら聞きにくい、「自己破産とは何?」を分かりやすく解説。
不動産投資をする人の一部が、自己破産に陥ってしまう理由&自己破産の回避方法についてもお伝えします。
目次
そもそも「自己破産」とは何?
自己破産とは、減収・失業・介護・離婚など、様々な理由で個人の経済が立ち行かなくなってしまった人が、裁判所に申し立てをして財産を清算する手続きのことをいいます。
「自己破産してしまったら終わり……」と、とても悪いことのようなマイナスイメージを持たれている人も多いですが、実際はそうではなく、自己破産は個人の経済を再建するための前向きな制度とも言えます。
続く項目では、「自己破産手続きの流れ」、「自己破産(および免責)のメリット・デメリット」、「自己破産の後の暮らし」など、自己破産とは何かを理解するための基本事項を述べていきます。
「自己破産の手続きの流れ」と諸々の注釈
- 弁護士または司法書士(※1)など専門家に相談し、
費用感や今後の動きについて説明を受ける - 依頼の成立後、専門家が
債権者に対して受任通知・介入通知を送付(※2) - 自己破産申し立てに必要な書類を準備
- 管轄の地方裁判所に自己破産の申し立てをする
- 免責が確定した場合、抱えている借金がゼロになる(※3、※4)
⇒ 上記(※1)~(※4)は後ほど注釈を加えていますのでチェックしてみてください。
上記は、手元に不動産や車など価値がある財産を所有していない場合にとられる、「同時廃止」の手続きの基本的な流れです。
自己破産を申し立てる人の多くが、このケースに該当します。
いっぽう、不動産や車など価値がある財産を所有している場合にとられる措置は、「少額管財」です。
この場合、自己破産手続きが始まってから、裁判所が選定した破産管財人が、申し立て人の持つ価値ある財産を、適切に管理・処分していきます。
「少額管財」の場合、自己破産手続き完了までにかかる期間が「同時廃止」と比較して長く、依頼にかかる料金も割高になってしまうことを踏まえておかなくてはなりません。
【注釈】
(※1) 自己破産手続きを依頼される専門家「弁護士」と「司法書士」の違い
⇒ 弁護士と司法書士間の大きな違いは、代理人になれるかどうかにあります。
弁護士は代理人になることができ、司法書士は代理人になることはできません。
(※2) 受任通知・介入通知とは?
⇒ 自己破産の手続きに際し、専門家はまず債権者に「自己破産の運びとなること」、
「それに伴い借入履歴や債権残高など正確な情報を提供する協力依頼」を通知します。
ポイントは、これにより債権者からの取り立てが止まることです。
(※3) 免責が決定してもゼロにならない支払い義務について
⇒ 免責が決定すると、借金はゼロになりますが、他の幾つかの支払い義務は残ります。
税金・罰金・損害賠償・養育費などがそれにあたり、「非免責債権」となります。
(※4) 免責が許可されない場合はある?
⇒ 「免責不許可」といって、原則免責が認められない事由もあります。
負債の理由がギャンブルによる浪費、特定の債権者にだけ債務を返していない等。
ただしその程度によっては、裁判官の裁量により免責許可が下りる場合もあるようです。
自己破産の主な2つのメリットと「自由財産」
「心を決めて、自己破産をする」
そのことで、債務者が得られるメリット(という表現もどうかとは思いますが……)は、主に2つあります。
自己破産のメリットとも少々関係する、「自由財産」の説明と併せて説明しましょう。
- 免責が許可された場合、すべての債務返済義務が免除される
- 自己破産手続きの開始後、債権者は強制執行や取り立てが不可になる
【1】免責が許可された場合、すべての債務返済義務が免除される
先述したように、裁判所に対し自己破産を申し立て、破産手続きの決定と同時に免責決定も得ることができれば、罰金・損害賠償などを除いた、すべての債務の返済義務が免除されます。
つまり、借金がゼロの状態から、個人の経済の再建を図ることができるわけです。
【2】自己破産手続きの開始後、債権者は強制執行や取り立てが不可になる
自己破産に至るまでの間、当然ではあるものの債権者から取り立てを受け、それが心理的な負担になっている人も数多くいます。
ただ、自己破産の手続きに踏み切り、弁護士あるいは司法書士の協力のもと、債権者に対し受任通知・介入通知をすれば、債務の取り立ては行われなくなります。
また、給料の差し押さえなどの強制執行も行われません。債務免除と同じく、個人経済の再建を図れる環境がある程度は整うわけです。
しかし、不動産や車など価値のあるものは、受任通知などに関係なく、裁判所の判断により管理・処分されることを、理解しておきましょう。
【POINT】自己破産しても手元に残る「自由財産」について
“自己破産=すべての資産が没収される”という認識をしている人が意外と多いですが、実はそうではありません。
自己破産によって一文無しになってしまったら、普通に生きていくことができなくなりますよね。
そこで基本的には、生活のために99万円までの現金の保有が認められており、この差し押さえされない現金のことを「自由財産」と呼びます。
ただしこれらの財産が同時廃止案件になるのか、少額管財案件になるのかなど、細かい規則は管轄の裁判所によって異なるため、各自確認する必要があるでしょう。
参考:松谷司法書士事務所『自己破産をしても残せる財産』
自己破産の主な4つのデメリットと「依頼費用の捻出」
おそらく、自己破産について知りたい人の多くが、自己破産をすることによるデメリットを憂慮しているのではないでしょうか?
自己破産をすることで被ってしまう不利益、すなわちデメリットには、主に下記の4つがあります。
- 資産を没収される
- 一定期間、クレジットカードを作れなくなる
- 一定期間、ローンを組めなくなる
- 一定期間、特定の職業に就けなくなる
【1】資産を没収される
当然と言えば当然ですが、自己破産は「どうしても債務を果たすことができない」ことを理由に認められるものなので、返済の“アテ”になるような価値を持つ資産は基本的に没収されます。
マイホームを含めた不動産や、主に車などが該当する時価20万円以上の資産が、没収の対象です。
先述した自由資産以外は、没収の対象に成りうると覚悟しておいたほうがいいでしょう。
【2】一定期間、クレジットカードを作れなくなる
自己破産をすると、その事実が信用情報機関に記録されてしまいます。いわゆる、“ブラックリスト入り”です。
各クレジットカード会社は、申し込み者の支払い能力・信用度の審査過程で、信用情報機関への照会を行うため、自己破産をした経歴があることが判ってしまいます。
当然ながら、自己破産履歴のある人=支払い能力に乏しい人・信用度が低い人と見なされるため、クレジットカードの審査に通る可能性は極めて低いです。
自己破産によりブラックリスト入りした人が、あらためてクレジットカードを作れるようになるまでには、5~10年ほどかかると言われています。
【3】一定期間、ローンを組めなくなる
先述した、クレジットカードが作れなくなる理由と同じくして、自己破産が原因で信用情報に傷がつくことにより、ローンの審査にも極めて通りにくくなります。
住宅ローンやマイカーローン、不動産投資ローンなど、あらゆるローン審査に支障があるでしょう。
再びローンが組めるようになるまでにも、やはり5~10年はかかると言われています。
【4】一定期間、特定の職業に就けなくなる
免責が決定すれば復職・就職が可能ですが、自己破産の手続きの間は働くことができない職業があります。
手続きの間、資格が剥奪されて就けなくなる職業には、弁護士・司法書士・税理士・宅地建物取引士・警備員などがあります。
特に、時間がかかる「少額管財」を経由した自己破産手続きをする場合、このデメリットは厳しいものとなるでしょう。
【POINT】自己破産手続きを専門家に依頼するお金がない!
「自己破産をするほどお金がないのに、弁護士や司法書士にどうやって依頼するの?」という疑問も多いかと思います。
自己破産者のこうした事情を重々踏まえ、分割支払いに対応している専門家や、免責許可を得た場合に報酬をとらない専門家などがあるので、問い合わせの段階で「自己破産を依頼するお金が捻出できないことにも困っている」と伝えるとよいでしょう。
弁護士に依頼するにしろ、司法書士に依頼するにしろ、料金が明確であるところへの依頼がマストです。
また、国が運用する制度「民事法律扶助」を利用できた場合でも、依頼費用の負担が減るため、困っている人は1度相談してみることを推奨します。
参考:日本司法支援センター法テラス『民事法律扶助』
自己破産の後の暮らしはどうなる?
自己破産の手続きをした、免責が決定し積もり積もった債務がゼロになった……。
ただし1番の大きな不安は解決されていません。それは、“自己破産後の人生”についてです。
- 家族を失うのか?
- 仕事を失うのか?
- 人権の一部を剥奪されるのか? ……etc.
様々な心配があるかと思いますが、基本的に人生が狂うような惨事にはなりません。
「官報」という日刊紙に氏名・住所が掲載されてしまうものの、これにはごくごく一部の人しか目を通さないため(しかも自己破産者は毎日多数あります)、通常は親類・仕事場などに、勝手に自己破産の事実が露呈してしまうことはありません。
よって、自己破産を直接的な理由として家族を失う、あるいは仕事を失う可能性は低いでしょう。
選挙権など国民の権利や、海外旅行などの人生を楽しむ権利が剥奪されることも勿論ないため、安心して個人経済の再建に取り組めます。
【POINT】自己破産によって“失われない”モノ
・賃貸住宅に住まう権利 ※家賃を払っている場合
・海外へ渡航する権利
・年金 ※きちんと納めている場合
・仕事 ※一部業種を除く
・選挙権 ……etc.
【まとめ】自己破産はあくまで“最終手段”であり原則回避するべきものと認識する
以上、「結局自己破産って何なんだろう?」「自己破産をするとどうなるのだろう?」といった、資産運用を始める人が今更誰にも聞きにくい疑問について、分かりやすく解説しました。
「借金の取り立てが止まる」「免責が認められれば債務がゼロになる」といった話を聞くと、自己破産は言われているほど大変なことではないように感じます。
先に述べたように、自己破産が破綻した個人の経済を再建する、“救済案”のような存在であるのも確かです。
とはいえ、「万が一うまくいかなくても、自己破産があるからいいか!」と無茶な投資に手を出すのはNGです。
デメリットの項で述べたように、一定期間クレジットカードの審査やローン審査に通らなかったり、自己破産の手続きの間、特定の仕事につけない・一時的に離れる必要があるなど、致命的ではないにしろ大きな社会的・経済的制約を受けます。
また、自己破産の手続きを受け、免責も認められ、債務がゼロになった人のなかには、「なぜ自分が自己破産をしてしまったのか?」を深く考えない人もいます。
そうした人は、自己破産しないようにどんなお金の使い方をすればよかったのか、何が問題だったのかが分からないままなので、今後の資産形成がしにくくなり、悪い場合だと再度自己破産に陥る可能性すらあるでしょう。
人生が大きく狂わされることはないにしても、やはりあくまで自己破産は“最終手段”。
特に投資など、リスクを有する方法で資産形成を考えている人は、徹底的に自己破産に対するリスクヘッジをしたほうがよさそうです。
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