不動産投資の金利上昇リスク想定 | 抑えておきたいリスクヘッジ

金利上昇イメージ

 

2018年8月に、トルコリラ/円相場が一時的に30%以上も下落した、“トルコリラショック”は、1年以上経った今も記憶に新しいです。

 

このトルコリラショックで示されたのは、金融市場は常に急変動の可能性があるという事実でした。

金融市場に何かしらの大きな変化があれば、それが不動産投資の金利にも反映されてきます。

 

不動産投資を行う方の中には、「日本経済が変わり、ローン金利が上昇したら、どうしよう?」と、心配されている方が少なくないでしょう。

 

そこで今回の記事では、“もしも、不動産のローン金利が上昇してしまったら?”というリスクを想定して、投資者が備えておくべきこと・考えておくべきことをまとめていきます。

現在の日本のローン金利上昇リスクは?

リスクについて考える人

まず、そもそも現在の日本にローン金利上昇のリスクがあるのかどうか、ローン金利上昇の条件を踏まえて考えてみましょう。

 

あくまで推測の域を出ませんが、現状ではローン金利が急上昇するリスクは低いです。

好景気の傾向があるとはいえ、目に見えた変化がないことや、中央銀行(日本銀行)によるゼロ金利政策・マイナス金利政策などが影響し、日本のローン金利は何年も低い水準を保っています。

ただ現状ローン金利が低すぎる状態なので、多少上昇していくことは十分に考えられます。

 

金利が急上昇する要因を考えると、人口減少問題の解決策ができ、日本の景気が大幅に良くなることが、金利急上昇の条件と考えられるでしょう。

例えば、人口減少の対策として日本が秀でたAIシステムを開発し、その技術を海外に輸出できたとすれば、上記条件が満たされます。

この場合、不動産ローンの金利が大幅に上昇するかも知れません。

 

他にも経済好転のきっかけがあるかもしれないので、可能性は低いとはいえ、ローン金利上昇に備えておくのは無駄ではないでしょう。

以下では、もしも不動産投資で金利上昇した場合に起こる変化を、挙げてみます。

不動産投資で金利上昇すると起きる変化

ローン金利上昇イメージ

  1. 毎月のローン返済額が上がる (キャッシュフローが悪くなる)
  2. 利回りが下がる (収益率が悪くなる)

不動産投資において、金利上昇すると起きる大きな変化は、上記2点です。

以下でそれぞれの変化に関する内容を、詳しく見ていきましょう。

【1】毎月のローン返済額が上がる (キャッシュフローが悪くなる)

当然と言えば当然ですが、ローン金利が上昇すると、毎月のローン返済額が上がります

ただし、無制限・無条件にローン返済額が上昇する訳ではありません。

そんなことが起これば、ローンを返済できない方が続出してしまいます。

 

ローン金利の上昇を想定し、現在日本では“5年ルール”という、不動産投資の仕組みがあります。

金利上昇のタイミングに関わらず、ローンの返済額は5年に1回しか変わらないというルールです。

 

また、金利上昇があっても、ローン返済額を元の1.25倍までしか増額させない仕組みを、“1.25倍ルール”と言います。

※金融機関により5年ルールや1.25倍ルールがないところもあります。

利回りが下がる (収益率が悪くなる)

金利上昇が起こると、毎月のローン返済額が増えてしまうため、不動産投資における利回りが下がることも、考慮すべき問題です。

 

毎月の手だし費用が増えることにより、結果的に本来想定していた収益には届かない可能性が出てくるのです。

金利上昇に伴うイールドギャップの縮小が最も危険

注意イメージ

イールドギャップとは、収益物件のネットオぺレーションインカムの利回りと、固定長期金利の差のことを言います。

不動産投資における金利上昇が起こると、このイールドギャップが縮小し、消滅してしまう可能性があります。この可能性が、最も危険です。

 

例えば、ローン金利が低いおかげで収益率4%でまわせていけている物件があるとします。ただローン金利が上昇すると、毎月の支払が増え収益率がマイナスになる可能性があります。

 

このように、イールドギャップの縮小・消滅があると、不動産投資によって発生するプラスの効果(=レバレッジ効果)が起こらなくなり、“逆レバレッジ”というマイナス効果が起きてしまいます。

イールドギャップの変化をしっかり見ておかなければ、損した時の金額が、どんどん膨れ上がってしまうでしょう。

ローン金利の上昇に備えて行うべき3つのこと

ポジティブイメージ

先述したように、現在は不動産のローン金利が低いため、「不動産投資をやっておいた方がお得」という意見が多いです。

 

ただし、トルコリラショックのような経済状況の急変リスクは常にあり、決して金利上昇リスクがゼロになることはありません。

だからこそ、ローン金利上昇が起きた場合を想定した備えが、重要となります。

 

  1. 出口戦略を明確にしておく
  2. 変動金利から固定金利に変更する
  3. ローンの繰り上げ返済をする

【1】出口戦略を明確にしておく

出口戦略とは、経済的な損害が続く状況から、いかに損害を最小限に留めて撤退するのかを考えることを言います。

 

仮に2000万円の物件の場合、金利1.8%なら64,000円ほどになる毎月の支払いが、金利3.5%に上昇すると毎月82,000円になります。

ただ、先述した1.25倍ルールが適用されると、金利が3.5%に上がったとしても、5年間ルールも踏まえて直近の5年間はMAX80,000円までしか上がりません。

 

とは言え、16,000円の負担額増加は、投資家としては痛い所でしょう。築年数の経過に伴い、増える傾向にある管理費を考慮すると、看過できません。

 

そのため払えなくなる前に手放すなど、どのような出口戦略を描くかは、“自分は負担額増加にどれだけ耐えられるのか”という前提を踏まえ、個々に考える必要があります。

【2】変動金利から固定金利に変更する

現状で変動金利の方が、契約上固定金利への変更が可能な場合、固定金利への変更を検討することも、1つの金利上昇リスクに対する備えです。

 

ただし、変動金利から固定金利への変更は、極めてハードルが高いです。

金利種類の変更が難しい場合、ローンの借り換えをするほうがいいかも知れません。

 

例えば、2000万円の物件を35年のフルローンで購入していた場合、金利が違えば毎月の支払いがこのように変わります。

  • 金利1.9%の場合 ⇒ 65230円
  • 金利2.5%の場合 ⇒ 71499円

1ヶ月で6269円差、10年では752,280円差です。

 

ただここで15年後には変動金利が4%になる可能性が考えられる場合、支払い金額はどのように変わり、どうするのが理想的なのか、分かりやすくシミュレーションしてみました。

【プランの変更に伴う金額シミュレーション】

※以下、シミュレーション条件

・支払い額の見直しは、5年に1度
・5年後に変動金利が4%になる(0.14%増加/年)と想定
・固定金利は変動金利より0.6%高いと想定

―― ①変動金利で20年払い続ける場合
金利
(プラン)
支払い額 5年総額
1~5年 1.9%
(変動金利)
65,230円 3,913,800円
6~10年 2.6%
(変動金利)
72,575円 4,354,500円
11~15年 3.3%
(変動金利)
80,357円 4,821,420円
16~20年 4.0%
(変動金利)
88,554円 5,313,240円
合計 18,402,960円

 

―― ②固定10年で続けて、変動金利に代わる場合
金利
(プラン)
支払い額 5年総額
1~5年 2.5%
(固定金利)
71,499円 4,289,940円
6~10年 2.5%
(固定金利)
71,499円 4,289,940円
11~15年 3.3%
(変動金利)
80,357円 4,821,420円
16~20年 4.0%
(変動金利)
88,554円 5,313,240円
合計 18,714,540円

 

―― ③固定10年ののち金利上昇前にギリギリで他銀行の固定10年に借り換えする場合
金利
(プラン)
支払い額 5年総額
1~5年 2.5%
(固定金利)
71,499円 4,289,940円
6~10年 2.5%
(固定金利)
71,499円 4,289,940円
11~15年 2.5%
(固定金利)
71,499円 4,289,940円
16~20年 2.5%
(固定金利)
71,499円 4,289,940円
合計 17,159,760円

 

―― ④変動10年ののち金利上昇前にギリギリで他銀行の固定10年に借り換えする場合
金利
(プラン)
支払い額 5年総額
1~5年 1.9%
(変動金利)
65,230円 3,913,800円
6~10年 2.6%
(変動金利)
72,575円 4,354,500円
11~15年 3.2%
(固定金利)
79,219円 4,753,140円
16~20年 3.2%
(固定金利)
79,219円 4,753,140円
合計 17,774,580円

 

金利は借入先の銀行や、不動産投資会社によって違うため、あくまでも想定として出している数字となります。

【シミュレーションの結果】

仮に、金利が今後少なくとも4%ほどに上昇する場合、下記のような支払い総額シミュレーション結果となりました。

③1,716万円 < ④1,777万円 < ①1,840万円 < ②1,871万円

 

金利が上がることが想定される場合、固定金利を長く続けられるように運用することで無駄な出費を抑えることができることがわかります。

ただ、金利変動があまり大きくない場合は、変動金利のままの方が総支払額は安いでしょう。

【3】ローンの繰り上げ返済をする

ローンの繰り上げ返済をするのも、金利上昇のリスクを回避する1つの方法です。

 

例えば、金利が上昇してきていることはわかっている状態で、5年ルールによりあと1年間の金利変動がない場合。

ギリギリまで安い支払い金額にしておき、金利が上昇する前に繰り上げ返済をしておくと、元金が減るために、返済金額自体が下がります。

 

ちなみに、32000万円のマンションを35年のフルローンで購入していた場合、100万円分の繰り上げ返済を行うと、毎月の支払い金額はおよそ4,000円ほど下がります。

 

上記のように、繰り上げ返済により支払額の調整ができるので、将来的なキャッシュフローを見越してローンの繰り上げ返済をすることは、大事なリスクヘッジの1つだと言えるでしょう。

不動産投資における金利上昇は悪いことばかりではない

ポジティブイメージ

ここまで述べてきた金利上昇による影響を踏まえると、「金利上昇リスクが怖い……」と心配されるのは、普通のことです。

ただし、不動産投資における金利上昇が、必ずしも悪い状況であるとは言えないことも、また事実なのです。

 

金利上昇が起きるということには、日本経済が好転することが大きく関わります。

好景気が過熱しすぎないよう、お金を借りにくくするために中央銀行が金利を上げるからです。

 

東京23区の限られた地域(需要が高い地域)においては、利上げによりお金が借りにくくなる影響と、好景気により取引が活発になる影響を比較した時、後者の方が強い可能性が考えられるため、所有物件を売却しやすくなるかもしれません。

 

また、現状の金利だと、不動産投資はローリスク・ロングリターン型の投資ですが、金利上昇後はミドルリスク・ミドルリターン型の投資として扱うことができる可能性も有しています。

 

金利上昇リスクの存在を認め、自分に合った対策方法を考える必要はありますが、”5年ルール”や”1.25倍ルール”のような、投資者を守る仕組みもまた、存在しています。

 

「安心して不動産投資ができる」とまでは言いませんが、「金利上昇リスクをただ恐れて、不動産投資を諦める必要は無い」とは、言えるかもしれませんね。

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